月に一度か二度

 佐野陽吉には、月に一度か二度、彼の所謂「快活の発作」なるものが起った。 初めはただ、もやもやっとした、煙のような、薄濁りのした気分……。それが次第に濃くどんよりと、身内に淀んできて、二つの異った作用を起した。一つは、頭脳がひどく鈍ってきた。一種の毒気みたいなものが、頭の中に立罩めて、こみ入ったこ...

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大阪行の二等車

「大阪行の二等車の網棚へ捨てた君のスーツ・ケースだ。豊橋駅のホームで広報係の駅員に、アナウンスを依頼した事実もあがっている。湖水に絵を描きに来るのに、こんな手の混んだことをするのはどういうわけだ? 納得のいくように話してもらおう」 癌になる前に、自分という存在を、上手にこの世から消してしまおうとい...

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あの晩のこと

「あの晩のことは、全部、話したわ。あたしに都合の悪いことでも、隠さずに言ったつもりだけど、てんで信用しないじゃありませんか。このうえ、精を枯らして、捜査の手助けをすることもないから」「手助けか。よかったね……おれは反対の印象をうけているんだ。君ほどのハグラカシの名人はいない。捜査一課の加藤組は、君...

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