参考人として取り調べられる立場にいる

 二人の女中しまや[#「しまや」に傍点]と久や[#「や」に傍点]は当時台所にいたと一致して答えた。 藤枝はこんな場合、必ず何か口を出して問を発するのだけれども、今日は病気の為かすつかり元気を失つてしまつてまるで黙りこんでいる。 林田も、今日は私と共に警部に一応参考人として取り調べられる立場にいるので、これも多くを他の者に対してはきかなかつた。 最後に、警部は二人の医師とひそひそとまた何か相談していたようだつたが、刑事が電話をかけに行つたようす、その緊張振りから察するに、事件は遂に検事局に報告されたらしい。高橋警部は、医師の説を詳しくきいた結果、他殺の嫌疑濃厚と見たのであろう。 変死体がそのまま現場になかつたのがすつかり警部の機嫌を悪くしてしまつたらしく、警部は、藤枝とも林田とも余り口をきかなかつた。藤枝も林田も今日は余り語らない。 八時すぎ、藤枝は私をかたわらに招いて、帰ろうというようすをした。私は直ぐ彼のあとに従つた。 玄関を出る時、私は藤枝と高橋警部の会話をちらと耳に挿んだ。不機嫌な二人はこんなことを云い合つていた。「高橋さん、あなたはまだ、早川辰吉を疑いますか」「無論です。彼の無罪が明らかにならぬうちは」「あなたは初江の死が過失死だと思うのですか」「藤枝さん、必ずしもそうではありません。しかし私は、第二の事件と今度の事件が必ず同一人のやつたものだと思う必要はないという意見です」

— posted by id at 03:42 pm  

T: Y: ALL: Online:
Created in 0.1852 sec.

http://submarinesystems.co.uk/