風呂場の花嫁

   風呂場の花嫁

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 一同が応接間に通ると、木沢氏がやがてやつて来た、早速初江の容体を本人から語ると、「そうですか。矢張り余りよくなりませんでしたか」 と云いながら、ポケットから薬の袋を一つ取り出した。「ここに散薬が三包はいつていますが……今苦しくありませんか? あ、そうですか。じやこれを、今日のお夕食前三十分前に一つのんで下さい。夕食は六時ですか。じや、まあ五時半位に一つのんで見て下さい」 それからひろ子のほうを見ながら、「さだ子さんにも申し上げてありますが、お父様はもう大分およろしいようで、うとうとしていられますからあのままにしておおきになつたら、よろしいでしよう。さてと」 木沢氏は金側の懐中時計をとり出して、「お父様も初江さんも大したことはないと思いますから、じや私は失礼します」「おやそうですか、僕もちよつと用事があるんです。何、すぐ戻つて来ますよ」 林田はこういいながら、木沢氏と一緒に玄関から出て行つた。 初江はもうすつかり気もちがなおつたらしく、別に自分の居間にひきとつて休もうというようすもない。 ひろ子が父のようすを見に応接間を出て行つた。室にはさだ子、初江、私の三人が残された。「伊達君はまだ今日は見えませんか」

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